相互会社から株式会社になることの意味

第一生命が、4月に「相互会社」から「株式会社」になりました。日本最大の株主数を有する企業となったことが話題となりましたが、そもそも相互会社から株式会社になるというのはどのような意味を有するのでしょうか。

相互会社というのは、「保険業法」によって保険会社に認められた組織形態であり、保険契約者が出資者であり会社の構成員、つまりは「社員」となります。非営利とされていますが、実際は営利的な性格を有している中間法人であり、保険料を支払う契約者が互いに助け合うこと(相互扶助)を基本理念としています。そして、会社を運営するのは出資者である保険契約者となります。日本生命・住友生命・明治安田生命など、大手保険会社の多くは相互会社です。ちなみに、4月に株式会社となった第一生命は、1902年に設立された国内における最初の相互会社でもあります。

株式会社というのは、「会社法」によって認められた、営利事業を行い、「株主」に利益を分配する組織形態です。そして、出資者である株主が会社を運営することになります。

2000年の保険業法の改正により、相互会社から株式会社への組織変更が可能となりました。大同生命や三井生命などが株式会社と変更しています。

さて、相互会社から株式会社になる意味はどのようなことでしょうか。株式会社の場合、最大のメリットは株式を発行することにより、資金を市場から機動的な調達が可能となることです。相互会社の場合は保険契約者が出資した範囲、運用利益の範囲内でなければ保険金を支払うことができません。しかし、株式会社の場合には株式市場という巨大なマーケットからも資金調達が可能となります。 

しかし、デメリットもあります。相互会社では保険契約者は社員としての権利を有していたため、経営に参加する権利がありました。会社の重要事項を「社員総会」で決めるのですが、契約者は多数存在するため、社員の代表者である「総代」を選出し、その集会である「総代会」によって決議を行う、間接的に経営に参加する仕組みになっています。対する株式会社では、株主が経営に参加する権利を有し、会社の重要事項について「株主総会」によって決議を行います。 

また、相互会社では保険契約者は財産の分配を求める権利(社員配当や残余財産など)を有していたのですが、株式会社では株主がその権利を持つことになります。ただし、これに関しては、第一生命では「契約者配当」という名目で従来の権利を守ることを表明しています。

第一生命の場合は、社員の財産である積立金を資本金として株式を発行したため、保険契約者が株式を受け取る形となりました。ただし、契約している保険の収支などを基に株式を割り当てたため、契約者の全員が株主になれたわけではなく、1株に満たない場合には一括売却され、現金で受け取ることになります。

第一生命の発表によると、株式が割り当てられた保険契約者は全体の90%である約738万人、1株以上の割り当てを受けたのは306万人となっています。さらに、株式を保持して株主になるのは約130万人とのことです。なお、割り当てなしというのは全体の10%である約83万人でした。1株に満たない割り当て分と、任意で売却を希望する株式の合計約710万株が売却され、金融機関や取引先企業が安定株主となります。

株式会社に変更するためには金融庁の認可を受けなければならず、莫大な資金と時間が必要となります。しかも、保険会社の性質上、株主の圧力を受けることで顧客との関係を長く続けるために必要な安定した経営が難しくなるという理由から、利益追求を求める株式会社という形態が適さないという意見もあるようです。また、株式会社といえば買収リスクがあることも忘れてはなりません。

そのため、簡単に相互会社から株式会社になるというわけにはいかないのです。

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